会社の事業目的


【1】会社の事業目的とは?


 

会社は営利を目的とする社団法人で、会社法によって設立されたものです。

 

会社は法人格を有していますので、その目的の範囲内でのみ権利・義務の主体となることができます。

 

会社が営もうとする事業のことを「会社の目的」といいます。

 

会社の目的は定款の絶対的記載事項(必ず記載しなければならない事項)であり、かつ、登記事項とされています(登記簿に記載されます)。

 

これは、会社がどのような事業を営むのか(会社の目的が何であるか)は、株主(社員)のみならず、第三者(取引の相手方等)にとって重要な意味をもつからです。

 

 

取引社会の通念に照らして、会社の事業内容が何であるかを知り得る程度に、具体的に記載しなければなりません。


【2】事業目的の決め方は?


現実に営んでいる事業又はすぐに始めたい事業だけでなく、将来営もうとする事業であってもかまいません。

 

目的の数に制限はありません。

 

「適法性」「営利性」「明確性」を具備していなければなりません。

 

目的の最後に「前各号に附帯する一切の事業」と記載しておけば、さらに目的の範囲が広がります。

 

事業の開始時に許認可を要する業種(建設業、宅建業、労働者派遣事業、産廃業、酒類製造業、薬局、質屋、古物商、飲食店業、銀行業、ガス事業など)が入っているときは、関係行政庁に打診しておくとよいでしょう。

 


【3】適法性とは?


■公序良俗に反する行為を目的とすること 

 人倫に反するものや正義の観念に反するものなど。

 

■強行法規に反する行為を目的とすること 

 「あへんの輸入・輸出」「煙草の製造」など。

 

■個々の事業は適法であっても、兼業することが禁止されているもの 

 料理店業、飲食店業、旅館業、古物商、質屋業、貸金業、両替業その他これらに類する営業を行なう場合は、職業紹介業を行なうことができないなど。

 

■一定の資格を有する個人に限られているもの 

 弁護士、行政書士、税理士、司法書士などの業務

 

■法制定又は法改正によって、適法性が認められるようになったもの 

 介護保険法による介護サービス、労働者派遣業法による派遣対象外の業務の原則自由化、債権管理回収業特別措置法による債権取立、児童福祉法施行規則による託児所・保育所の経営など。


【4】営利性とは?


利益をあげ得ない事業は会社の目的としての適格性を欠きます。

 


【5】明確性とは?


当該会社がどのような営業活動をするものであるかを第三者が判断できる程度に明確にしておかなければなりません。


【6】注意点は?


以前は日本文字しか使えませんでしたが、ローマ字を含む表記方法が社会的に認知されている語句は、目的の明確性に反しない限り、会社の目的に用いても良いことになりました。

 

特定の業界だけに通用する言葉で表現するときは注意してください。

 

「適法性」「営利性」についての審査基準は固定化していますが、「明確性」の審査基準は固定化されていません。現時点では不適格でも、将来、その語句を誰でも理解できるようになれば、適格性が生じることになります。

 

公証役場で定款の認証が拒否されたり、登記所で補正を命じられる例が、相当数あるようです。登記申請後に不適切であったことが判明しては、今までの手続きが無駄になってしまうのでご注意下さい。

 

事業目的に関しては、「先例として既存のものから選ぶ」か、「法務局や専門家に相談する」ことをお勧めします。


【7】事業目的の判定例


実際に登記された事業目的の先例の一部です。

 

■一般・電気(電子)輸送・精密機械製造

コンピューターインターフェイス制御技術の開発・施行

コンピューターシステムによるデータ入力及びそれに伴う事務処理の受託

コンピューター図形処理システムの設計、製作

コンピューター並びに関連機器の賃貸及び導入指導

コンピューター制御によるシステム開発及び販売

コンピューターの周辺装置及び端末機器の設計、製造並びに販売

コンピューターのソフトウェアの開発及び販売

 

■その他各種物品製造業

コンピューター周辺機器の製造販売

コンピューターのソフトウェア・ハードウェアの販売

コンピューターの販売

コンピュータープログラム並びにビデオソフトの販売

情報処理用コンピューターの製造、販売並びにソフトウェアの販売

情報通信システムに係る機器、及び装置類の販売

 

■情報サービス・広告・その他サービス業

インターネット上のショッピングモールの開設

インターネット上のホームページ検索ソフト(ウェーブソフトウェア)ウェアの販売

インターネットでの広告業務

インターネット等のネットワークを利用した商品の売買システムの設計、開発、運用及び保守

インターネットにおけるサーバー仲介業務

インターネットの接続仲介業、アクセスサービス業

インターネットのホームページの企画立案

インターネットを利用した各種情報提供サービス

インターネットを利用した各種情報資料の収集

各種イベントの企画、製作

企業経営上の各種リスクの調査、分析の委託並びにリスクの評価、及びリスク回避の相談の受託

企業経営上のリスク・マネジメントのコンサルティング、経営相談の受託

企業経営上のリスク・マネジメントの思想の啓蒙、普及並びに教育、出版

企業経営上のリスク・マネジメントの実証的研究、及び資料の収集、並びに情報の提供

広告及び宣伝業

広告業

広告、宣伝に関する企画並びに製作

広告代理業

コンピューター及び其の関連機器による情報処理事業

コンピューターシステムの企画、開発、販売及び保守に関する業務

コンピューターシステムの分析、設計業務

コンピューター情報漏洩保護用ソフトウェア、ハードウェアの販売

コンピューター通信機器、設備の保守管理業務

コンピューターネットワーク、インターネットの利用に関わるトラブル処理及び指導

コンピューターネットワークシステムの管理、運営

コンピューターネットワークの企画、開発

コンピューターのソフトウェアの開発

コンピューターのネットワークによる通信システムの保守、販売、メンテナンス

コンピューターを利用した各種計算業務並びに情報サービスの提供

情報管理、処理サービス

情報システムの企画、設計並びに管理運営に関する業務

情報処理サービス業

情報処理サービス業並びに情報提供サービス業

情報処理並びに情報通信ネットワークに関するシステムの設計およびソフトウェアの開発

情報処理に関する研究、開発事業

情報処理に関するソフトウェア及びハードウェアの研究・開発並びに販売宣伝広告事業

ソフトウェアー業

マルチメディア関連情報サービスの提供

 

■専門サービス業

各種催事の企画、製作、運営

企業経営に関する助言、指導及び研究

経営コンサルタント業

経営者、管理者、一般社員に対する教育

コンピューターグラフィックの企画、製作

コンピューター図形処理システムの設計、製作

コンピューターのシステム設計及び販売

コンピュータープログラム並びにビデオソフトの作成業務

 

■その他

コンピューター教室の経営

汎用コンピューターシステムのコンサルタント業


【8】各種許認可申請・届出の一覧表


無許可・無認可・無登録で営業をすることがないように十分注意してください(罰則等があります)。

 

営業を開始する前にあらかじめ調査する必要があります。

 

会社設立と同時に許認可業務を始める場合は、特に注意が必要です。

 

会社を設立できてもすぐに許認可が得られないケースがあります。

 

公証人も登記官も許可が得られるかどうかのチェックまではしてくれませんので、営業を開始するにあたり、許認可が必要であれば、許認可申請の要件を満たす事業目的を入れた定款を作る必要があります。

 

★会社設立後に関係行政庁から目的の変更を求められた場合は、目的の変更登記や定款変更が必要になります。

 

【許認可の種類】「許認可が必要な方」

 

■建設業(建設業許可) 「建設業者・建設会社」

 

■宅地建物取引業(宅地建物取引業免許)「不動産業者・不動産会社」

 

■電気工事業(電気工事業者登録)「登録電気工事業者・電気工事会社」

 

■解体工事業(解体工事業登録)「解体工事業者・解体工事会社」

 

■古物商(古物商許可)「リサイクルショップ・古本屋・骨董・中古車販売業・金券ショップなど)

 

■貸金業(貸金業登録)「消費者金融業者・手形割引業者・事業者金融業者(不動産担保金融業者等)・金銭貸借の媒介を業として行う者・貸付けを行なう質屋(質屋営業を除く)・貸付けを行うカード会社・貸付けを行う信販会社・貸付けを行うリース会社・貸付けを行う百貨店・スーパーなど」

 

■一般労働者派遣事業(一般労働者派遣事業許可)「人材派遣会社・派遣会社」

 

■特定労働者派遣事業(特定労働者派遣事業届出)

 

■有料職業紹介事業(有料職業紹介事業許可)「人材紹介会社」

 

■産業廃棄物収集運搬業(産業廃棄物収集運搬業許可)「産業廃棄物収集運搬業者」

 

■建築士事務所(建築士事務所登録)「建築士事務所」

 

■酒類小売業(酒類小売業免許)「酒屋など」

 

■介護保険事業者指定

訪問介護(ホームヘルプサービス)

訪問入浴介護

訪問看護

訪問リハビリテーション

居宅療養管理指導

通所介護(デイサービス)

通所リハビリテーション(デイケア)

短期入所生活介護(福祉系ショートステイ)

短期入所療養介護(医療系ショートステイ)

特定施設入所者生活介護

福祉用具貸与 

特定福祉用具販売

居宅介護支援

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

介護老人保健施設(老人保健施設)

介護療養型医療施設(療養型病床群など)

 

■たばこ屋

 

■米穀販売業

 

■ガソリンスタンド

 

■一般区域貨物自動車運送業「運送業者・運送会社・引越し会社」

 

■限定区域貨物自動車運送業

 

■特定貨物自動車運送業

 

■一般路線貨物自動車運送事業

 

■軽車両等運送事業

 

■第一種貨物利用運送事業

 

■第二種貨物利用運送事業

 

■一般乗用旅客自動車運送事業「タクシー会社」

 

■一般貸切旅客自動車運送業「バス会社」

 

■自動車の貸し渡し業「レンタカーなど」

 

■自動車分解整備業

 

■倉庫業

 

■通訳案内業

 

■第1種旅行業者「旅行業者・旅行会社・旅行代理店」

■第2種旅行業者

■第3種旅行業者

■旅行業者代理業

 

■貸駐車場

 

■理容業

 

■美容業

 

■クリーニング業

 

■ペットショップ

 

■コインランドリー

 

■コインシャワー

 

■調理業「飲食店営業・喫茶店営業」

 

■製造業「菓子製造業、あん類製造業、アイスクリーム類製造業、乳製品製造業、食肉製品製造業、魚肉ねり製品製造業、清涼飲料水製造業、乳酸菌飲料製造業、氷雪製造業、食用油脂製造業、マーガリン又はショートニング製造業、みそ製造業、醤油製造業、ソース類製造業、酒類製造業、豆腐製造業、納豆製造業、めん類製造業、そうざい製造業、かん詰又はびん詰食品製造業、添加物製造業、つけ物製造業、製菓材料等製造業、粉末食品製造業、そう菜半製品等製造業、調味料等製造業、魚介類加工業、液卵製造業」

 

■処理業「乳処理業、特別牛乳さく取処理業、集乳業、食肉処理業、食品の冷凍又は冷蔵業、食品の放射線照射業」

 

■販売業「乳類販売業、食肉販売業、魚介類販売業、魚介類せり売営業、氷雪販売業、食料品等販売業」

 

■医薬品等の販売業「薬局等」

 

■ホテル・旅館業「ホテル・旅館等」

 

■公衆浴場・風呂屋

 

■動物病院・診療所

 

■施術院「はり・指圧・マッサージ等」

 

■殺虫消毒業

 

■医療用具

 

■毒物劇物

 

■質屋

 

■風俗営業 第1号営業(キャバレー)

第2号営業(待合い・料理店・カフェ等)

第3号営業(ナイトクラブ等)

第4号営業(ダンスホール・ディスコ等)

第5号営業(喫茶店・バー等)

第6号営業(個室喫茶・バー等)

第7号営業(麻雀・パチンコ等)

第8号営業(ゲームセンター等)

 

■深夜種類提供飲食業

 

■警備業「警備会社」